起業するつもりなんてなかった。[起業話#1]

なぜこんなことになったのか、今でもよく分からない。

僕はなぜ起業したのだろうか。

いや、いつの間にか起業してしまったのだろうか。

僕は、いわゆる「起業」をしてから、2017年で14年が経過し、個人事業で4年、法人化してからは10年の月日が経ったことになる。

どうしてこんな風に書くのかというと、僕自身、「起業」なんて全くするつもりなかったからだ。

だけれども、気がついたらいつの間にか起業してしまっていた。

 

事の成り行きはこうだ。

大学を卒業して東京で就職した航空会社のWEB事業部。

ここの物語も話せば長いが、端折って話そう。

そこは、今で言う超ブラックな勤務体系の会社だった。

深夜まで働いて、仮眠程度の睡眠とシャワーのために一旦家に戻り、また出勤の繰り返しの日々だった。

新入社員も中堅も関係なく、とにかく人と時間が足りなくて、毎日が張りつめた時間の連続。

そんな折、大きなプロジェクトが発足したが、そのプロジェクトの予算を偉い上司がネコババしていることが発覚。

やつのデスクトップの背景はベンツだった。きっと、ネコババした金で買うつもりだったのだろう。

それを知った当時の同僚が言ったセリフが「俺たちアリンコかよ!」だった。

薄給で長時間セコセコ働く僕たちは確かにそんな感じだった。

でも、チクるのは怖かった。

チクってバレたら、とにかく性格の悪いそいつに嫌がらせされるのが目に見えていたからだ。

(そいつの嫌がらせは人を恐怖で身動きできないようにするような最悪なものだった。)

でも、事実を知っているみんなは許せていなかった。

そして、うまい具合に信頼できる上司に話した人がいた。

ざまあみろなことに、ネコババ上司は、表向き自主退社、実質懲戒免職になった。

チクった人最高!

だが、それはとてつもなく長い戦いで、余計な神経がすり減る戦場だった。

解決したころには、退職者が続出していた。

僕も仕事内容は好きだったが、上司たちの政治争いに嫌気が差し、いつの間にかそこで働くことがバカバカしくなってしまっていた。

そして、大好きな仕事だったが、辞めることにした。

とにかく、疲れていた。

 

当時の僕は、次の仕事が決まっていたわけでもなかったが、なぜだか特に焦ってはいなかった。

おそらく、疲れていたのだ。

普通の世の中から、一歩距離を置きたかったのかもしれない。

遊ぶ暇もなかったのが幸いして少しの貯蓄があったし、しかも、退社前に野蛮な生活が災いして、緊急入院したため、退職理由が病気となり、失業保険もすぐに出た。

そこで、とりあえず実家に帰ることにした。

その時は、いずれまた頃合いをみて、東京で仕事を見つけて、東京に戻るつもりだった。

しかし、久方ぶりに帰った実家のご飯は美味しかった。

掃除も洗濯も自分一人でしなくていい実家は、居心地が良すぎた。

そして、東京に舞い戻るタイミングを確実に無くした。

 

これが奇しくも、起業人生が始まるきっかけだったのだ。


起業するつもりなんてなかった。[起業話#1]
起業するつもりなんてなかった。
[起業話#1]