その程度の人間[起業話#15]

僕がWEB事業を個人事業で始めたころは、僕が住む地方都市では、まだまだこの業界はうなぎ登りの好景気だった。

そのため、当然それにあやかろうという知識もプロ意識もないぽっと出の自称「WEBディレクター」がウヨウヨいた。

その人達は、営業力があったら、それはそれはやっかいで、口がうまいので、仕事を取ってくるが、自分では、どうすることもできないので、僕らのようなWEB制作ができる人間にそれを振ってくる。

別に良いのだが、僕がよく腹を立てていたのは、そいつらのプロ意識のなさだった。

知識が少なくても、それを認めていて、「教えてほしい」という姿勢と、知識がないながらもクライアントのために最高の仕事がしたいから協力して欲しいという姿勢のWEBディレクターには気持ちよく協力、むしろ仕事をさせていただけて感謝の思いで接することができたが、少しは、勉強すればいいものを、全く勉強もせず、いかにクライアントに高い制作料で契約をつけるかばかりを考えていた、エセWEBディレクターとはよくぶつかった。

よくあったのは、知識がないから予算内で出来もしないような要件を調子をこいて受けてくることや、専門知識がないクライアントにうまいことを言って、半ば騙すような法外な金額で契約するようなやつだ。

一番最悪なのは、ミーティングにも同行させられ、企画等もすべて丸投げしてくるやつだ。

ディレクションができないのなら、最初からそう言えばいいのに、こちらに投げてくる仕事があまりにも多いので、ディレクションの見積もりは別見積もりでと要求すると媚びるような感じで、追加料金はなしにしてほしいとせがまれる。

僕たちは、「業者」じゃない。どんな仕事でも「業者」扱いされた時点でそいつとの縁は切るべきだと僕は思っている。

もし、縁が切れずにずるずるとなるようなら、自分がしんどい思いをすることは間違いない。

エセWEBディレクターのお陰で僕は学んだ。

パートナーとして対等にビジネスができる相手と仕事をするべきだ。

こちらが下手にでたり、媚びへつらう必要があったり、お願い営業をしなければならないそんな相手とはいい仕事ができないし、長続きしない。

僕は納得がいかなければ、「おかしい」ということを、とことん突き詰めた。

結局、エセWEBディレクターは、時代の流れと共にどこかにいなくなってしまった。

クライアントも馬鹿じゃない。メッキは剥がれるのだ。

何年かしてから、エセWEBディレクターのひとりから、『僕に失礼なメールを送るんじゃない!』という主旨のかなり怒りモードのメールが送られてきた。

あなたにメールなんか送ってませんけど?と思いながら、読むと、僕の会社名と似た名前の会社からの営業メールに激高したらしい。(まあ、それくらいのことで怒るのもどうかと思うが。)

もちろん、大人な対応を僕はした。

失礼ながら、僕の会社は○○で、メールの送信元の●●という会社は別の会社のようですね。こちらからはメールはお送りしていません。

という内容でとても丁寧に書いた。

あなたが、このエセWEBディレクターの立場ならどうするだろうか?

僕なら、大変申し訳無い。とまず謝り、こちらの勘違いで不快な思いをさせてしまったことを即座に詫びる。

だが、エセWEBディレクターからは何の返信も、連絡もなかった。

失礼にも程があるとは、まさにこのことだ。

その程度の人間なのだ。

そういった人間と仕事をして、時間も気持ちをすり減らすのは、限りある人生、とってももったいないと、僕は思う。


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