思いがけない人員増加[V字回復下り坂#3]

法人化し、オフィスを構えてからは、とにかく仕事をしまくった。

夜の付き合いも、誘われれば、断ることなく顔を出した。

とにかく忙しい日が続き、数時間アルバイトのヤスオと、正社員事務の知世さんだけでは、人手が足らなくなっていた。

そんな折り、知人からデザインや制作の仕事をしたいと言っている人がいると、一人の若者を紹介された。

面談してみたところ、人柄も素直で、やる気もあったので、新しく雇うことにした。

もちろん、正社員としてだ。

その頃は、とにかく仕事が溢れていた。

入ってくるものもでかいが、出ていくものもでかいことに僕はまだ気がついていなかった。

しばらくしてから、知り合いの職業訓練を行なっている会社から職業訓練生のインターン生を見て欲しいと依頼を受けた。

忙しい最中、一度は断ったが、知り合いから頼み込まれ、2人受け入れることにした。

実際に仕事をしてもらったのは、10日間ほど。

インターンの最後になって、そのうちの一人がうちで働きたいと言っていると知り合いから申し出があった。

忙しくはあったが、人ではギリギリ足りている状態。

正直、その時は新しいスタッフは必要なかったが、東京とは異なり、地方都市の町では、デザインやWEB制作をしたいと思っても、まだまだ働き口が充実していなかった。

僕としては、先に一緒に仕事をしているヤスオが正社員になって、勤務時間を伸ばしてもらう方がありがたかったが、彼にその話をしても、性格なのだろうか。

いつまでたってもそうなるつもりはないようだった。

夢を持っている若者を受け入れて、彼らのやりたい仕事に熱中できる環境を提供してあげたいという気持ちもあった。

結局、僕はその子を正社員として、受け入れることにした。

期待をかけて、育てれば、期待に答えてくれるだろうと思った。

入社したばかりのスタッフは、ほとんど素人だ。

とにかく、それからは、自発的に向上心を持って、学んで、仕事をしながら体で覚えてもらうしかなかった。

新しい二人は若いからだろうか。徐々に成長していった。

すると、ヤスオは何を感じたのだろうか。

先に入っている自分に近づく、もしくは追い越す勢いで成長している若手に焦る気持ちがあったのだろうか。

それまで続けていたアルバイトの一つを辞めて、自分も正社員になりたいと言い出したのだ。

彼を無下にすることもできず、結局、正社員は4人となった。

マンパワーが充実した分、コストは想定以上に膨れ上がった。

だが、いい仕事をこなしまくれば、まだまだ伸びることができると僕は思っていた。


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