相手を受け止める[交渉術#4]

【記事要約】

ビジネスシーンでは多くの場合、交渉術が必要になる。何故か交渉が全くうまくいかない人がいれば、なぜかすいすいと交渉がうまくいく人もいる。その違いについて僕が自分なりに分析した内容を紹介。

1.  相手の腹の中をすべて出させる

交渉相手は、こちらからの申し出に対して、考えられるデメリットや課題など、ある意味マイナス面について、突いてくることが多い。

その場合、相手が話したい事はすべて吐き出させることが大事だ。

途中で話を切って、こちらの話を進めるのではなく、相手が腹に持っていることを全て放出させるのだ。

相手の目を見て、話を聞き、相槌を打つ。

この相槌は、相手の意見に賛同するという意味ではなく、相手の話をちゃんと聞いていますよという意図を伝えなければならない。

そのため、「はい」という言葉と共に、相槌を打つのではなく、あくまで、頷きであるほうが良い。

そして、相手がすべての思いのたけを出し切ったなというタイミングで、例えば「○○社長はそのようにお考えなのですね。社長のお気持ちは大変良く理解できました。」

と、寄り添う姿勢を見せることが大切だ。

そう。交渉事の際には、私はあなたサイドの人間ですという、無意識の寄り添いが大きな力を生む。

この腹の内を全て出させる作業はとても大切だ。

腹のなかに「とはいっても、こうなんだよな。」という交渉内容に対してアンチの考え方が残っていると、ほぼ100%交渉内容は受け入れてもらえない。

もしその場で、結論を出さずに、「分かりました。一旦塾考させてもらいます。」などと言って、話し合いが終わったとしても、結局こちらの交渉内容は最終的に受け入れてもらえないだろう。

2. 考え得る問題をすべて回避提案する

相手がこちらの交渉に対して、思っている腹の内を全部出させることができたら、次は、その課題やデメリットに対応することが必要だ。

この時、全部出してくれた腹の中に対して、「大丈夫ですよ。社長が考えてるような心配事はクリアできます」という漠然とした回答は、NGだ。

相手はきっと「何を根拠にそんなことが言えるのだ」と意味不明の状態になるだろう。

相手が言った課題やデメリットをクリアできる場合には、その理由と根拠を分かりやすく伝える必要がある。

全く、それらの課題はクリアできるのか、一部クリアできるがメリットの方が多いのか、はたまた、まったくクリアできないが、将来的な望みをかけて交渉内容を受け入れるべきなのか。

要は、課題やデメリットがあったとしても、その交渉内容を受け入れる方がメリットが大きいことを、交渉相手に納得してもらわなければならない。

この場面では、それまでの経験がけっこうものを言うので、最初は苦労するかもしれない。

だが、この場面が一番交渉を成立させる要となると言っても過言ではない。

自分のなかに蓄積した、実経験からや、信頼できるデータなど、相手が絶対的に納得できる要素で切り返しが必要になるからだ。

要は、相手が交渉内容に対してNOを言えないよう、理詰めしていくのだ。

例えば、下記トピックの例で書いたような、

「あなたのために」を伝え、良心に訴える[交渉術#3]

社長は「現在の業者から今すぐにでも新しい業者に依頼をし、自社の担当者も別の担当者に変更したい」と考えているが、「業者はいずれ切るが今すぐには切らない。新しい業者を選定しつつ、移行期間を設ける。トップである担当者は据え置きのまま、体制を変える」という方向に交渉を進めた場合、社長からは提案に対して、下記のような懸念点が出て来た。

(1)現在の業者と新しい業者の移行期間を設けると2社に支払いが発生するからコストの無駄じゃないか?

(2)担当者を変えないことによって、プロジェクトの進行スピードが結局変わらず、内容も良くならないのではないか?

(1)に関しては、確かに2社分のコストがかかるが、今現在の業者を切ってしまうと、メンテナンスができなくなってしまう。かといって新しい業者は一からになるので、すぐにこちらの望む応対は難しいと考えられる。そうなると、トラブルの発生が予想され、そのことによって、業務が滞り、社員の不満も募ると考えられる。全体的に見ると、リスクも多く、結果的に損害が発生し、コスト以上のマイナスが予想される。現在の業者から、新しい業者に引き継ぎを確実に行うことによって、安全かつ確実に移行をすべきだ。

(2)に関しては、プロジェクトに関して一番知識があるのは現在の担当者だ。だが、フットワークが良くないというのは、社長がおっしゃる通りなので、実働部隊は若手の担当者を各部署から選抜し、チームを作る。社内の統括プロジェクトなのに、部署間の横の繋がりがないため、そのことが、実際に構築されたプロジェクトへの不満にもなっているので、当事者として参加してもらうことにより、各自に責任感も芽生え、部署間のコミュニケーションも取れ、さらには社員自らが積極的にプロジェクトに参加してもらえると考えられる。

この交渉はうまく行き、僕の提案内容を受け入れてもらえた。

結果、うまくプロジェクトが回り始め、結果も出ている。

圧倒的にNOを言わせない理詰め。

これが、交渉において、一番重要なポイントだと僕は考える。

さらには、一度こちらから提案した内容で事が上手くいけば、それは信頼になり、次回からの交渉もやりやすくなり、いい循環がうまれるのだ。