【記事要約】
出ていくお金の詳細を把握するだけで、意外にも財務状況が改善する場合がある。細かいところまで見ていられないと人任せ、財務担当者だけが把握している状況は危険信号。
不思議なものなのだが、会社や組織から毎月出ていっているお金を把握するだけで、財務状況が改善する場合がある。
苦しんでいる経営者や社長は意外にもこの出て行くお金に無頓着なことが多い。
出ていくお金を把握することによって、コスト削減に繋がることが往々にしてある。
売上を100万円伸ばすよりも、出費を100万円抑える方が労力的には格段に楽なのだ。
いわゆる傾きかけた事業の「出血を止める」作業である。
無我夢中で事業を進め、拡大していく内に、経営者は財務という細かい作業やチェックを人に任せ、事業自体に集中するケースが多い。
しかし、時に事業の雲行きが怪しくなる時がある。
そんな場合に、しっかり出ていくお金の見直しができるかどうかが、とても大きな節目になると僕は考えている
イケイケドンドンで伸びてきた経営者ほど、
「そんな細かい事を自分がやっていたら、本来の仕事が滞る。」
「そのくらいの出費は賄わなければ甲斐性がない。」
「誰かに任せて数字だけをチェックする。」
といった理由で、雲行きが怪しくなった時でも出ていく数字を追うことをしないものだ。
見栄もあると思う。
コスト削減をすることが、恥だと思っているのだ。
そうしている内に状況はドンドン悪くなり、回復の見込が見えなくなってしまうことが多い。
僕は声を大にして言いたい。
・出費は常日頃1日ベースでチェックし、スタッフにも綿密なコスト意識を植え付けるべき
・出費は1円たりとも無駄にするな
・傾きかけた組織は、出費を抑え(=コスト削減)、出血を止めることこそが組織健全化への一番簡単な第一歩
実際、僕自信がお金で大変な目を見た時に、この出ていくお金の見直しによって、大幅に健全化が図れたからだ。
徹底的に見直しをかけて、月ベースで250万円の削減を計った。
組織の大きさにもよると思うが、当時の僕の組織レベルとしては、驚異的な削減レベルだった。
このコスト見直しをするきっかけは当時の担当会計士のおかげだった。
僕も先に書いた経営者と同じく、出ていくお金の見直しはせずに、なんとかなるだろうという根拠のないポジティブだけで乗り越えようとして、とてつもなくしんどい思いをしていた。
しかし、もうどうしようもないという状況になって、会計士から言われ、恥も外聞もなくなり、徹底的に出ていくお金の見直しをしたのである。
具体的な実施内容は次のようなものである
・事務所の移転。家賃が発生するオシャレな事務所から知人に無料で借りられる一軒家へ。
・ITツール(低額もしくは無料のもの)を駆使し、固定費がかかっていたサービスを解約。例えば自社サーバなど。
・セキュリティなど、あったらいいけど、なくても問題ないサービスをすべて解約
最期に一番、経営者としてはやってはいけないことであり、したくなかったことだったが、社員を解雇した。
これは苦渋の決断だった。僕の能力が足りなかったがために、スタッフに悪いことをしてしまった。
今でも、自分にとって、負の遺産として苦く記憶に刻まれる出来事だ。人生最大の汚点とも言えるかもしれない。
しかし、経営をしていくためには避けられない道だった。
そうして、様々なコストカットをし、月250万円の削減をすることができた。
そして、月250万円の売上を新たに得るよりも、250万円のコストを削減する方が格段に労力がかからなかった。
この出て行くお金の見直しをきっかけに、僕はコストに関して非常にケチになった。
当然、掛けるべき投資はするが、その判断にシビアになった。
そして、これをきっかけに組織はV字回復したのである。
ここまで大変な状況に陥る前に、経営者であれば、日頃から出ていくお金に関しては何よりも敏感でなければならないと思った。
見栄を守るよりは、現実を見て実直である方が、よっぽど利益に繋がるのである。