【記事要約】
ビジネスシーンでは多くの場合、交渉術が必要になる。何故か交渉が全くうまくいかない人がいれば、なぜかすいすいと交渉がうまくいく人もいる。その違いについて僕が自分なりに分析した内容を紹介。
いよいよ、交渉したい事について具体的に言及するという段階。
例えば、実際に僕がした交渉で、とある企業にアドバイザーとして入っていた時に、業者を変更するかどうか、担当者を変更するかどうかという事態になったことがある。
その業者があまりにも使えないのと、その使えない業者を継続したい担当者がいて、社長はその業者に腹を立て、すぐに新しい業者に依頼をし、自社の担当者も別の担当者に変更したいという状況だった。
実際、僕個人であれば、その業者はとっくに切って他のまともな業者にチェンジすることを選んでいたと思う。
だから、この場合は社長と同じ考えだったのだが、その時の段階では、いきなりその業者を切ると様々な弊害が起きうることが想定できたので、慎重にことを運ばなければならないと判断した。
また、組織の中で上層部にいたその担当者を別の担当者にとなると、現在の担当者の『立場』というものが、今後、組織の中で微妙になってしまい、そのことによる社内の雰囲気の悪さも懸念された。
よって、僕は、業者はいずれ切るが今すぐには切らない。新しい業者を選定しつつ、移行期間を設ける。トップである担当者は据え置きのまま、体制を変えるのが一番だと判断した。
だが、社長は、今すぐにでも業者を切れ、むしろ訴訟を起こして損害賠償を求めろ。と、かなりのご立腹様だった。
僕もその気持ちはもちろん良く分かった。
だが、コストと人材リソースと労力、そして、当初の目的をまっとうするために一番の方向性を考えると、それはあまりよくない選択だと考えた。
社長は、かなり剛健な正確で、全社員が恐れるような存在だった。
そのため、このような社長の意にそぐわない提案は誰もが打診しかねた。
案の状、僕が行ってくれとの声がかかり、社長と一対一の話をすることになった。
そこで、僕が伝えたことは、次のようなことだった。
① 社長の考えはもっともだと思う。僕も同じ考えだ。
② 僕は社長(会社)にとって、一番よい事は何かを、とてつもなく頭を絞って考えた。
③ 社長の考えは、実現したいと思う。ただし、今すぐにではなく、時間をかけて実現したい。
④ 社長の考えを今すぐ実現すると、問題が多く、それがさらに会社(社員)を苦しめることになる。(どんな問題が起こりうるかも全て話す)
⑤ 会社の本来の目的を達成するためには、新しい業者を半年ほどかけて、慎重に選定する。そして、今の業者から移行する。そうすれば、理想的な流れになるはずだ。
⑥ このやり方をすれば、コストも労力も最小限に抑えられる。
⑦ 担当者に関しては、社長が考えている問題点は確かに存在する。
⑧ しかし、担当者は据え置きが望ましいと考える。
⑨ なぜなら彼は、10年もの間、このプロジェクトに邁進してきた。だからこそ、このプロジェクトへの思いも社内のだれよりも強い。社内でも上層部のため、『立場』というものを考えると、ここで、外すというのは、いたたまれない。
⑩ ただし、よりスムーズにプロジェクトを進めるために、社内の人員を変更し、プロジェクトメンバーの強化をしたらよいと思う。
⑪ プロジェクトをグループとして構成し、各部署の人員に参加してもらうことによって、組織のヨコのつながりが強化され、次の人材育成にもつながるからだ。そのためには、現在の担当者が一番深い知識を持っているので、いい指導者になる。スピーディーにプロジェクトを動かす人員はメンバーの中から選出するという手もある。
これらの内容は以下のように分類できる
<社長への寄り添い>
①、②、⑦
<良心への訴え>
④、⑨
<僕の意見>
③、⑧、⑩
<意見の理由>
⑤、⑪
このように、社長への寄り添いの言葉、良心の訴え、僕の意見、意見の理由を絡ませて交渉した。
結果は、僕に任せると、社長は、僕の意見を全面的に取り入れてくれた。
思うに、意見とその理由を並べるだけでは、人は動かないのだと思う。
心の琴線に触れることが大事なのではないだろうか。
そのためには、一生懸命あなたのために、あなたの会社のために僕は考えているということと、良心への訴えが必要なのだと思う。
寄り添い、良心への訴え、そして自分の意見と理由を絡ませる手法、是非試してほしいと思う。