僕がV字の下り坂を下りきって、一番底にいる頃、家族はもしかしたら僕が鬱や精神的に参っているのではないかと心配していたかもしれない。
そのくらい、僕は落ち込んで元気がなかった。
自分でも心配をかけているなと、感じつつも、気持ちが沈んでしようがなかった。
朝から晩まで一心不乱にPCに向かい、睡眠時間2、3時間の毎日、忙しいときには3日徹夜、寝食とトイレ、風呂以外はとにかくPCにかじりついている姿は異様だったことだろう。
だが、そこまでしなければ、僕はV字の底から這い上がることができなかったのだ。
とにかくもがいていた。
うまくV字回復できるかどうかなんて、まったく確信がなかった。
もしかしたら、破産手続きを踏まなくてはならなくかもしれない。
その可能性は大いにあった。
V字の坂道を下っている最中には、たくさんの裏切りにもあった。
正直、今でも簡単に人は信用しない。
「銀行は雨が降っている時には傘を貸さない」その言葉は以前からよく聞いていたが、本当にその通りだった。
雲行きが怪しくなると、あれだけ熱心に来ていた銀行マンは波が引くようによりつかなくなった。
厚生年金や、税金を払う力がなく滞納していたため、それらの機関からはヤクザの取り立てのような取り立てがあった。
特に厚生年金は、ひどい。
様々な問題を起こしている上、今後の運用も明確でないのになぜあれだけ強気の取り立てができるのか理解できない。
厚生年金も、消費税もそうだが、職員は「預かっているお金だから無いわけがない。預かったお金を使い込んだ」という言い方をする。
だが、実際そうではないことは経営をやってみれば一目瞭然だ。
ある意味、経営者というのは社会で一番立場が弱い人間かもしれない。
今は払える資金がない。だが、払う意志はあるから今、事業を必死でやっているのだと言っても、ある日突然銀行口座の差し押さえをしてくる。
僕も一度やられたが、借り入れがない銀行だったのが、不幸中の幸いだった。
借り入れがある銀行だったら、銀行からは一括返済を求められたことだろう。
こちらのビジネスなんてお構いなしだ。
税務署はまだ良心的だから、今でも分割返済の対応など感謝しているが、厚生年金は今でも嫌いだ。
その他にも、とにかく色んな酷いことが立て続けに底辺の直には多発した。
悔しくて、床に腕をつき、声を押し殺して泣いたこともある。
惨めだった。
だが、僕は折れそうな心をなんとか保って、一歩一歩少しずつでも進み続けた。
とにかく諦めなかったのだ。
底辺の時点では、とにかく出口が見えなかった。
でも、歩き続けるうちにほんの僅かに出口の明かりが見える気がした。
さらに歩き続ける内に、希望が湧いてきた。
そして、さらに出口の明かりに向かって歩きつづけて、やっとの思いで借金を全額返済し、ようやく再びスタート地点に立ったのだ。
その過程が、V字回復の坂道が辛すぎて、坂を登りきった時の感動というのはおかしなものだが、特になかった。
ようやく背負うものがなくなり、伸び伸びと仕事が、生活ができる。
ただそれだけだった。
だが、V字回復の坂を登ることで学んだことは「精神を保つ」ということだった。
イキりすぎても、怖気づいてもダメなのだ。
モチベーションアップのセミナーに行って、自分自身を盛り上げる必要なんてまったくない。
それこそ、アップダウンが激しすぎて反動が大きく、そんなものに時間とお金を費やすほうが馬鹿げている。
今、注力すべきは、そこではないのだ。
とにかく、一定の水準を修行僧のように保つ。
ただそれだけだった。
そして、ひとつひとつとにかく進むこと。
これだけだ。