V字下り坂エピソードのひとつめのお話し。
一見すると、とてつもなくラッキーなことのように思える話しですが、今思えばこれが、V字の坂道を下りだす始まりでした。
個人事業として起業してから1年半が経った頃、僕は経営者が集まる会で知り合ったとある会社の社長から、株式会社として事業をしてみないかと持ちかけられた。
しかも、資本金はその社長が出すというのだ。
僕は迷った。
その頃にはもう、ニート時代のふわふわ感はなくなり、いち経営者として、ほんの少し、お堅い人間に僕はなっていた。
ひと昔の僕なら、即座に断っていただろう。
しかし、株式会社なんて考えたこともなかった展開に惹かれた。
株式会社の社長となることによって、自分が大きく立派になれるという欲目が若干あった。
しかし、反面、他人の資本が入ることにより、自由度が少なくなり、自分の意見や理念を押し通しづらくなる可能性がある。
迷いに迷ったが、冒険好きな20代だった僕は、結局のところその申し出を受けて、出資してもらい、株式会社を設立する道を選んだ。
先に結末を話すと「法人化と覚悟」の記事にも書いたように「僕にとっては」これはいい選択ではなかった。
この時、立ち上げた会社は10年経った時点で休眠させ、僕は僕だけの会社を立ち上げたのだ。
ただ、この選択が間違いというわけではない。
人によっては、こういったステップが逆に追い風になることもあるだろう。
ただ、僕の性格からして、やはり他人との二人三脚は向いてなかったのだ。
共同経営の会社は多くがうまくいかない。
これは、世の中の多くの人がそう言う。
僕のように、だれかから出資してもらう、要はエンジェルが出現して、株式会社を立ち上げるという流れになったケースはとても多い。
とてもよく聞くケースだ。
出資金を工面する必要がなく、法人化によって、事業の幅が広がり、また事業が加速することは魅力的だ。
だが、出資してもらっている分、エンジェルの意見や考え方に添わなければならない面も出てくる。
これが、最初は大丈夫だと思っていても、意外にさまざまなフラストレーションの要因になってくる。
最初は仲が良くても、数ヶ月、数年経った頃に仲違いという話もザラだ。
このご時世、「自分で株式会社を作って見た」のシリーズにも書いたように株式会社というのは、ちょっと面倒な手続きと、そんなに多額でない資金でできてしまう。
一度、エンジェルのおかげで法人設立したものの、結局は閉じてしまった経験がある僕からしてみると、エンジェルによる法人設立はよーく、とてもよーく考えた方がいいと思う。
実際、自分の力だけで法人設立をして、僕はようやく鎖から解き放たれた気分になったからだ。
事業が加速し出すと、この手の誘いや、法人設立でないにしろ、儲け話のようなものはかならずどこかから、流れてやってくる。
その手の話は、慎重に検討した方がいい。