ゆでガエル[起業話#20]で書いたように、僕の会社の経営危機は企業5年目、法人化3年目にやってきた。
危機の予兆の一番最初は何だったか忘れてしまったが、とにかくその時は、忙しかったにも関わらず、まずは利益が出なくなってきていた。
原因のひとつは、労力がかかる割に安い仕事ばかりが入ってきていたことだ。
僕の会社はそのころ、デザインにも定評をもらい、WEB制作の仕事だけでなく、印刷物やプロダクトデザインの仕事も受けるようになっていた。
会社としてそれらの仕事を受けるのであれば、当時出していた見積もりの5倍以上は提示するべきだったと、今は思う。
その5倍増しの見積もりを出して、NOなら、その仕事は取らない。
そういったスタンスを取るべきだったのだ。
しかし、僕は個人事業主当時の感覚が抜けていなかった。
印刷物のデータ制作やプロダクトデザインはとにかく、打ち合わせの時間も制作の時間もかかる。
しかし、利益はWEB制作の10分の1程度だ。
「依頼された仕事は断らない。」
起業当初の信念は、法人化し、社員を抱え、経営責任を抱えた時点で考えを見直すべきだったのだ。
当然、格安でいいものを作ってくれるのならと、それらの利益を生まない依頼は増えるばかりだった。
そうした中、危機の訪れと共に、良くない輩も近寄ってきていた。
制作物を納品したにも関わらず、支払いをしない取引先が発生したのだ。
最初は、支払いが遅れる程度だった。
しかし、徐々にその支払遅れの期間が伸び、最終的には連絡がつかなくなった。
要は、夜逃げだ。
契約書を結んでいようが、こういった場合はどうしようもなかった。
結局、僕たちはやり損で、こういったことが重なり、キャッシュ・フローの雲域は徐々に怪しくなっていった。
さらに、タイミングが悪いことにリーマン・ショックが発生した。
経営は外的要因に左右されてはいけない。
そんな教科書にのっている言葉は百も承知だったが、影響を直ぐに受けたわけではなかったが、確実にその波は僕達の業界にも押し寄せていた。
支払いが滞る企業が1つや2つじゃなくなったのだ。
しかも、かなり高額のWEB制作を請け負った取引先が、最終クライアントからの入金がないから支払いができないという、とんでもない理由で支払いをしてこなかったのだ。
さすがにこの頃には、キャッシュ・フローが行き詰まっていた。
そして、この頃から、法人化の際に出資者に、資金繰り悪化のため、いくらか貸付をしてほしいとお願いするようになった。
さらに、僕は、借金をしない主義だったが、運転資金確保のために銀行からの借り入れも申し込んだ。
これまで、無借金で前期までが黒字決算だったため、幸いにして、銀行はどこもすんなり貸してくれた。
それは、それで助かったのだが、他からの借り入れは後々、とても苦労することになる。
僕は、売上を上げるためにとにかく必死に、次の一手を考え続けた。
ここで、僕はとるべき行動を間違えていた。
売上を上げるために、僕は経営、マネジメント、自己啓発に関する書籍を読んだり、セミナーや勉強会に参加したりしたのだ。
一生懸命。何かしらのヒントを求めてだ。
当然、それらに費やす時間と投資は、売上を産まない。
そして、更なる悪循環を生んでいった。