【記事要約】
起業したら、本業の仕事だけではなく、それ以外の様々な業務を自分でする必要も出てきます。僕が直面したのはまず「見積り」の作成。初めての見積りづくりにまつわる話をご紹介します。
ラジオ局の部長おじさんのお陰で、僕は人生初、自分で仕事を直に受けることになった。
詳しくは、おさらい>前回のお話「いわゆるニート[起業話#2]」
1. 初めての見積り
初めての取引先となるレストランを始めるというオーナーさんのところに一緒に連れて行ってもらって紹介してもらった。
そのレストランオーナーは、パワーとユーモアに溢れるアーティストタイプの人で、この初めての取引先となった、レストランオーナーとはその後も長くお付き合いさせてもらうこととなる。
ディレクションは慣れた仕事だ。
まずは世間話から始め、その後僕の経歴をラフに話し、自然な流れで5W1Hを元にヒアリングをさせてもらった。
大体、どのようなニーズがあって、どのような夢があるのかを把握し、提案のため持ち帰らせてもらうことに。
若干高揚した気分で自宅に戻り、そこで、はたと気がついた。
提案書とは別に「見積もり」というものが必要なことに。
会社努めの頃は、上司が算出した工数を元に、営業担当が見積もりをしていた(と思われる)。
しかし、その業務に僕はノータッチで、今まで見積書と言うものを作ったことも見たこともない。
僕は困った。
見積書のフォーマットは、ネットでいくらでも落ちていたので、それを元に作ればよかったのだが、肝心の価格の出し方が皆目検討つかなかったのだ。
そこで、僕はだいたいの勘で20万円と見積書に記載した。
WEBサイトの制作費用はまさにピンきり。
3万円と打ち出している会社もあれば、数百万、時には数千万規模のWEBサイト制作もある。
だが、今回は簡単なWEB制作だったので、おそらく20万円程度だろうと考え、そう記したのだった。
しかし、後々振り返ってみると、これが大誤算で、起業してからある程度経験を積んだ今、計算すると、最低でも50万は値段を付けるべきものだった(倍以上違う!)。
まあ、初めていただいた仕事だったし、胸を貸して頂いて、報酬以上の仕事をしたということにしておこう。
2. 要点を押さえれば怖くない!見積り雛形
起業して初めて見積りを作り、それをクライアントに出すときは誰でも緊張する。
僕もそうだった。
だけど、見積書も要点を抑えれば怖くない。
僕は制作の仕事を3年前に卒業し、現在は手を動かす仕事は一切していないが、それまでは下記フォーマットの見積もりで困ることはなかった。
概算見積書雛形(フォーマットはWEB制作の場合のもの)
<EXCEL版>「概算見積書雛形」
<PDF版>「概算見積書雛形見積入力例」
上記フォーマットに、足りないものは追加し、いらないものは削除すれば、十分に使用可能なはず。
僕はこれを、行政や一般企業、さらには上場企業相手にも使ってきたので何ら問題は無いと思う。
よく「こうあるべきだ!」なんて情報があるけれども、正直そんな細かいところに時間をかけてキチキチに動くよりは、生産的な仕事に時間をかけて成果を上げるほうが、ビジネスマンは大事だと僕は思う。
要はクライアントに何をどのくらいやると幾らかかるのかを分かりやすく伝えるためのツールなのだ。
3. 概算見積書と見積書の違い
さらに細かく言えば、暫定見積書と正式な見積書の2つが必要といったことが、業務マニュアル的な情報として掲載されていたりするが、僕の場合は、概算見積を1回提示し、追加があれば追加です。と都度追加見積もりを出すやり方を取ってきた。
概算見積書:ヒアリングを通してざっくりとした金額把握のための見積もり
(正式)見積書:スケジュールや細かい仕様調整を進めた上での最終決定価格の見積もり
ちなみにやらなくてよい項目が発生したりして、概算見積より低くなる可能性がある場合は、別の提案をして、見積価格より売上が低くならないようにした。
じゃないと、良いものを作ろうとすると、何だかんだ、結局見積もり以上の手間が発生しているもの。
だから、損をしないように、最初に提示した金額はしっかり頂くようにした。
だから、見積金額より請求金額が下がるということは、今まで一度もなかった。
馬鹿真面目に「この項目なくなったのでお値引きしておきますね。」よりも、「無くなった分、ここをさらに良くしするために注力しますね。」の方が、お互いにハッピーははずだ。
4. 見積書のキモ
見積書は基本的に下記項目を押さえておけば問題ない。
①見積書の宛名は法人の場合もちろん「御中」を付けて記載。個人の場合は「様」を付ける
②見積もり有効期間は多くの場合1ヶ月だが、自由に設定OK。税率の変更が決まっている時期などは要注意。
③会社の角印を忘れずに押す。
④見積もり項目は専門用語を使わず、クライアントにも分かりやすい言葉で記載。(その方が見積もりが通りやすい。信用にも繋がる。)
⑤備考には必ず「仕様変更及び追加案件に関してはその都度別途お見積もりさせていただきます。」と記載。ある程度の変更はやむなくとしても、さすがにこれは…という時にクライアントに打診し易い。
⑥承認者と担当者のハンコを忘れずに押す。
⑦Excelの計算式を信用しすぎない。
たまにExcelの計算式が狂っている場合がある。Excelを信用しすぎて、そのまま提出すると損をすることもあるし、見積書はいわゆる「信書」にも含まれるため、こちらの信用にも傷がつく。金額は念入りに確認すること。特に税率変更前のファイルをコピペして使用した場合など、税率が旧税率で誤ってしまうことも。(僕は一度これをして、損をした。)
5. 見積りを出すときは、堂々とした自分を演じよう
初めての仕事で20万円の見積もりを出す時は正直ドキドキだった。
今では「安すぎだろ!」とツッコミどころ満載だが、当時は高すぎると言われないか心配でならなかったのだ。
しかし、こちらの心配をよそに、20万円の見積もりと提案内容にご納得いただけ、無事成約となった。
その場で、OKと言われた時は、なんだか本当に嬉しかった。
社会人になってすでに何年か経っていたが、初めて自分の足で社会に立っているような気分になった。
本当に、この時僕の提案と見積もりを受け入れてくれたレストランオーナーと紹介してくれた部長おじさんには、感謝しかない。
このレストランのホームページを作る機会がなければ、その後の僕の起業人生はきっとスタートしていなかっただろう。
その後、何度も見積りを出すことがあったが、時を重ねて勉強したことは、「見積りは堂々と出せ」ということだった。
最初の僕のように、「高いって思われないかな」「断られたらどうしよう」というこちらのビクビクは相手に伝わるもので、いい仕事をするスキルを持っていても、相手に不安を与えてしまうものなのだ。
だから、見積りは「僕はプロフェッショナルです。あなたにとって最高の仕事をします。その報酬として、この金額をお願いします。」という気持ちで胸を張って堂々と出した方がいい。
お金をもらうことは悪ではない。
お金はルールだ。
約束した仕事を約束通り納めるというルールなのだ。
だから、自分は最高の仕事ができると自負しているなら、なおさら見積りは堂々と提示しよう。
初めて仕事を受ける
[起業話#3]