法人2期目を経て、業績は増収増益の黒字だった。
「人脈と不義理[起業話#19]」で書いたように、僕は完全に自信過多だった。
3期目に入り、正社員4人になった時点で、ほころびが出始めていたことに全く気がついていなかった。
根拠のない自信で覆い尽くされていたのだ。
ビジネスをしていて、この「根拠のない自信」ほど怖いものはない。
とにかくうまく行くだろう。行かないわけがない。失敗するはずがない。という根拠のない自信で僕は人材マネジメントも経費コントロールも知らずに、我が道を進んでした。
しかも、この頃は金銭感覚がおかしくなっていた。
月収数十万のサラリーマンの感覚を超えたことがなかった僕が、月にかなりの額のお金を稼ぎ、動かすようになったことで、お金の感覚がくるってしまっていたのだ。
イメージとしては、10,000円を使う感覚が1,000円、はたまた100円を使うような感覚になっていたのだ。
車を買ったり、夜遊びで散財したり、服やカバンなどは値札を見ずに買っていた。
「使ってもすぐに稼げる」そんな考えがあった。
結果的に僕は、ジワジワと窮地に追い詰められていることに気が付かず、危機を到来を迎えてしまう。
危機とは、大きくお金と人の2つだ。
売上が変わらない、もしくは下がっている月がほどんどにも関わらず、先のビジネス戦略をまったく考えていなかった。
社員は、自分と同じモチベーションで働いてくれているとばかり思っていた。
ある時、その2つの危機は飽和状態になる。
そして、同時期に爆発するのだ。
僕が色んな企業や経営者と接してきて思うのは、危機はすべて同時進行で動き、ある時同時に爆発することによって、その組織は崩壊へと動き出す。
そして、多くの人はその危機に驚くほど鈍感だ。
経営者でさえ、鈍感なのだから、社員が気づくことなんて、確率的にはより少ない。
仮に、できる社員がそれに気がついたところで、彼らがそれほどその組織に愛着をもっていなければ、さっさと転職してしまう。
危機は必ず何らかの予兆を表現しながら近づいてくる。
つまりは、なんらかのシグナルがあるのだ。
経営者がどれだけ、そのシグナルに気づくことができるかがカギだ。
図に乗った経営者がそのシグナルに気がつけるかどうか、そこが運命の分かれ道になる。
僕の場合のシグナルの一つは、「変な人間が近づいてきた」ということだった。
金使いが荒くなると、当然、カネ目当てに目を光らせている、いわゆる詐欺師な人間が近づいてくるくるのだ。
それだけではない。
その当時を振り返ってみて、「あの人はちょっと無かったな。」と思う人は、どういう人かというと、そんな詐欺師的人間だけじゃない。
不思議なことだが、
・約束を守らない
・金を払わない
・うそばかりつく
そんな人間が、不思議と寄ってきていたのだ。
そんな人間との波乱万丈な日々は追って書きたいと思うが、とにかく、何か事がおかしな方向に向かっている時は、不思議なことだが、僕の場合は、こんなちょっとおかしな人が寄ってきていたのだ。
これは、今思えば、危機へ向かっているというシグナルだったと思う。
経営者はこの「シグナル」を感じる感性が必要だと僕は考える。